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◆震災の後で
「私たちにとって、真のお客様は誰なのか」。そんな命題に取り組む研修が始まったのは、あの大震災から7、8カ月が過ぎた頃だったでしょうか。
工場全壊を乗り越え、傾いた本社で仕事を再開できた当時、弊社社長は「私たちは生かされたのだ」としきりに申しておりました。社会にお役立ちできる強固な会社にするためには、'情報加工'の本質を見極め、確固とした差別化力・絶対浮力を持たなければならない。そんな想いを込めて、精神的支柱として頼っていたコンサルタントの角田先生へ研修をお願いしたのです。
研修当初、最大の壁は'言葉'でした。「オンリーワン」って何? 「アウトソーシング」ってどういうこと? 「顧客志向」で何ができるの? とまどいつつも'まじめ'が取り柄の若手社員たちは、狭い休憩室で膝を突き合わせるように研修に臨み、やがてひとつの言葉に行き当たります。『エンドユーザー』という、我が社が今、宝として大切にしている'共通語'こそ、苦境の中で私たち自身が'気付かされ'、'育ててきた'言葉なのです。
◆お客様の向こう側にいる方たちへ
安く、早く、丁寧に仕事をした時、その代価をくださるのはお客様です。私たちは当然、お客様の方を向いて仕事をするべきだと考えていました。無論、それはその通りなのです。けれど、私たちの仕事の本質は'情報の加工'。加工すべき情報を受け取るのは一体誰なのでしょうか。
例えば「短大の学校案内」。お仕事をくださるのは、学校の広報部です。けれど、それを手にするのは'未来'を探している高校生たちなのです。お客様の向こうには、まだお客様がいたのです。その方たちのことを『エンドユーザー』と呼び、私たちがホントウに情報を届けなければならない人たちなのだと気付いた時。お客様が真に求めるのは「学校案内」というツールではなく、'入学希望者が増える'という'効果'であるということを知った時。これが我が社の第二の出発点だったかもしれません。私たちは、仕事を通してこれらのことを'実感'し、'確信'しました。以来ずっとここに依拠し、互いに指摘することができるようになったのです。「その加工でエンドユーザーに伝わるの?」と。
◆日光流企画提案
あれから、もう7年が過ぎようとしています。研修後間もなく、我が社に企画室が誕生しました。学んだことを噛み砕き、試行錯誤を繰り返して、漸く'日光流'といえるものを生み出せるようになってきました。常にエンドユーザーの立場に身を置き、自分だったらどんな情報が欲しいだろう、何を求めるだろう、という視点を忘れずにご提案し続けた成果が、少しずつ目に見えるようになってきたようです。
◆'効果'に出会う
ある私立高校の学校案内を作り始めて、今年で3年になります。5社による企画コンペを勝ち抜いて獲得した仕事です。その学校は、地元では'やんちゃ'なことで有名で、私たちも多少の先入観を抱いていました。
真実とは見えにくいもののようです。取材してみると、先生は熱心で個性的。生徒さんは大らかな校風の中で驚くほど純粋に育ち、学校を誇りに思って巣立っていきます。今時、ドラマでも描かれないような学校なのです。そのピュアな心根に触れ、幾度涙したことでしょう。私たちはたちまち魅せられてしまいました。
仕事とはいえ、ファンになれば力が入るというもの。つい、ビジネスを超えて手間暇かけてしまい、コスト意識が足りないと叱責されて猛省を迫られたこの夏、ある少年に出会いました。
その1年生は小さい頃から虫好き。パソコン熱とあいまって、受験の真っ只中にクワガタ専門のWEBサイトを立ち上げてしまいます。そのユニークさを買い、次の学校案内に取り上げることになったのです。取材中、お決まりの質問をしました。「なぜ、この学校を選んだの?」。彼はこう答えます。「パンフレットが他所の学校のと全然違ってて、'やり直せる'学校なんだと思えたから」。
そう、私たちは'効果'その人に出会うことができたのです。学校案内で効果を出すということは、とてつもなく困難なことです。ましてや少子化の現在、学校は過当競争の真っ只中。学校案内一つで入学者が増えるほど甘くはないし、学校側もそこまでを求めているわけではないのです。ただ、私たちは心に期していました。この学校の素晴らしさをもっと世間に知ってもらいたいし、誤解も解きたい。何より、生き方がわからず悩み迷っている15歳の少年の居場所がここにあることを知ってほしい。学校案内に託したその想いを、真っ直ぐ受け止めてくれた少年が目の前にいるのです。企画・制作者冥利に尽きる、この上もなくうれしい出来事でした。
◆'情報'とは
ビジネスは結果が全て。自己満足だけでは、代価を頂戴することはできません。けれど、情報とは「感情、情念、情動、そういうものをちゃんと伝える」ことです。五木寛之氏がある講演会の基調講演で話されたというこの言葉に触れた時、心から共感し、納得することができました。
日光流の情報加工の真髄は、人と人、人とモノを切り結ぶ仕事を通じて、情を通わすお手伝いをすることにあるのではないかという気がしてなりません。だから、この仕事に誇りを持っています。ビジネスのしくみとしてはまだまだ未熟で、学ぶばかりの日々です。それでも、エンドユーザーの立場に立つという原点に常に立ち返ることさえできれば、どんなに厳しい状況も乗り越えることができると、信じていられる今の私たちです。
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